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商品情報

私たちの向かう先

「墾」は、「自然酒の奥深い世界にもっと分け入りたい」という、寺田本家の向かう方向を示しています。お米の量や人手などの制約で数量限定になってしまいますが、今の私たちができる限りのことを尽くした、私たちの心を伝えるためのお酒です。

耕作放棄地を復田する

10年以上放置されてきた谷津田(やつだ=谷間に挟まれた田んぼの呼称)があると聞いて最初に見に行った時、放置されている間に生い茂った草や篠竹が、道も田んぼも覆い尽くし、所によっては灌木も生えていました。ただ、山からのしぼり水が田んぼに垂れる沢に、サワガニがいるのを見つけ、その豊かな自然環境に目を見張りました。この沢の水でお米を育て、そのお米でお酒を醸すことができれば、また一段、自然酒の奥深い世界に分け入ることができるようになるのではないか、そう考えて復田を始めました。当初は、誰もが「ここが本当に田んぼになるのか」と冗談のように言っていました。

先人へ感謝し、夢を描く

草刈りを続けていると、次第に谷津田の原型が見えてきて、一面一面が大きな棚田になっていることがはっきりと見えるようになりました。昔の人は山から湧き出す水の流れを見て、ここを棚田にしようと思ったのでしょう。そんな先人たちに感謝を抱きました。
ここが一面田んぼになったらどんなに綺麗なんだろう。ここでお米ができれば、木桶一本分にはなるからお酒を造れたらいいな。そしていつか、たくさんのお客様をお呼びして、一緒に田植えをしたり、ここで酒盛りができたらどんなに素晴らしいことだろう。復田の合間、心地良い風に吹かれながら、傾いていく太陽を前にしてみんなで夢を描いていました。

七転び八起き

ようやく復田したと思った矢先、湧き水の量が少なく、水がたまらないことがわかりました。田んぼに水がたまらないことにはお米ができないと、ポンプで地下水をあげることに。水のことが解決したと思ったら、今度は嵐の後に田んぼの脇に大きな木が横倒しになっていることもありました。

より自然に沿って

復田した田んぼには、寺田本家で育ててきた在来種のお米を中心に田植えをしました。農業用水は整備されていないため、湧き水や地下水、雨水、豊かな土壌を活かし、土や水に暮らす生き物や微生物の力で、無農薬無化学肥料の米作りをしています。稲刈りでは、できる限り手刈りして、刈った稲をおだ掛けして天日干しにしました。

より手仕事で

酒造りでも極力手仕事にしようと、蔵に住んでいる麹を自社で種麹にし、蓋麹で麹を造り、昔ながらの唄を唄いながら酛摺りし、木桶に仕込みました。蔵に住み着く菌たちが自然と酒母やもろみの中に入って発酵をはじめます。そして、ふなしぼりで丁寧にしぼってお酒にしました。

自然に分け入るお酒を

蔵に棲みつく微生物たちが織りなす発酵の末に、谷津田の風景や、ここに暮らす生き物、目には見えない水中や土中の微生物といった、生命の輝きが少しでも映し出されるようなものになれば、私たちがお米を作って、自然酒を造ってきた意味があるような気がいたします。