寺田本家とその周辺
寺田本家と
その周辺
水のこと
寺田本家は神崎神社の鎮守の杜の麓にあります。神域としていまも大事にされる杜にはクスノキのご神木をはじめとして大木群があり、その杜に蓄えられた水が、樹木の根や土中菌糸を伝って、寺田本家の井戸を満たし、350 年涸れることなく湧き続けています。
また、蔵の敷地内には 20 トン以上の炭が埋められていて、微生物環境や水脈環境の改善に取り組んでいます。硬度 120 度と日本の中では硬水にあたり、たくさんのミネラル分が溶け込んだ水です。
自然発酵の過程では水に由来する菌も大事な役割を果たすと考えられていて、井戸から湧き出るまさに生命溢れる水こそが寺田本家のお酒造りに欠かせません。
田んぼのこと
10年以上耕作放棄されてきた谷津田を復田しました。谷津田の周囲には、雑木林や杉林、ため池や小川があります。人が自然とともに生きることで、そこには細やかな環境の違いが生まれ、生き物の多様性が生まれます。私たちの復田した谷津田には、サワガニやホタル、オニヤンマ、渡り鳥のサシバ、ミズカマキリ、目には見えない水中や土中の微生物などが暮らしています。
道具のこと
酒造りにはたくさんの道具が使われます。かつて、木や竹などの地元にある自然素材のものが多く使われていましたが、次第にプラスチック製品などに置き換わっていきました。作ることができる職人さんたちも少なくなってきています。木や竹などの自然素材を使わなくなったために、森に人が入らなくなり、それが山が荒れる要因の一つともなっています。
職人さんたちと一緒に仕事ができればと、2013年木製の甑(こしき=お米を蒸す器)を大阪の職人さんにお願いして作っていただき、使い始めました。木を使うことによって蒸し上がりも良くなり、昔の素材の素晴らしさを感じています。さらに、米を運ぶ米揚げ笊は栃木の若い竹職人さんに作ってもらいました。そして、現在進行で地元千葉の山武杉を使った新しい木桶を作るプロジェクトも、小豆島の職人さんたちの協力のもと、進んでいます。山武で森林整備をしている仲間の森から伐り出すところから始める木桶も計画に含まれており、350年目から使い始める木桶で自然酒造りの新しい広がりをお届けできたらと願っています。
エネルギーのこと
自然の制約のもとに生まれるのが自然酒です。無制限にエネルギーを使えた時代は過ぎた今、電力については2020年より、再生可能電力を100%を使用することが可能になりました。そのほかのエネルギーについても早い時期に再生可能エネルギーに変革していくことを目指しています。
地域のこと
江戸時代の中期、延宝年間(1673〜81年)に寺田本家は、滋賀の近江から現在の千葉県香取郡神崎町に移ってきました。
神崎町は利根川の水域で水が豊富で、昔からお米作りが盛んな場所でした。その豊かな原料と、それに加えて船を使って利根川を遡り、大消費地の江戸(現在の東京)にわずか 1〜2 日で酒を運ぶことができることなどの優位性を生かして、 この地はかつては戦前までは酒蔵が 7軒、醤油蔵が 4軒と味噌屋も数軒と醸造業が盛んに行われていた地域でした。
現在も町の中には発酵をテーマとする道の駅があり、そのほかにも、町の中で味噌造りや農業体験などさまざまな農業や発酵にまつわる催しも行われています。成田空港からも車で30 分程度の距離を活かし、海外からのお客様も年々増えています。