酒は百薬の長   てのひら造り   微生物との響き合い   支えられて生かされる

 ●ありがとうございます●
 江戸時代の延宝年間(1673〜81)、近江からこの地、神崎(こうざき)へ移り、ひたすら酒造り一筋に精進してまいりました。皆様もご存知とは思いますが、戦時中の米不足をきっかけに始まったアルコール添加酒(遺伝子組み換え問題にも係わる)そして乳酸、コハク酸、粉アメ等の添加物等で増量。さらにほとんど大半の蔵では、即席で造られ、これらは今でも続いているのが現状です。
そして大量生産の時代になり、生産性や効率を追いかけ、原価の安い酒造りを目指し、本来の日本酒ではなくなり、日本酒離れが進 む結果となってしまいました。私たちの蔵でも昭和の時代には、そのようなお酒を造っておりました。大変申し訳なく謙虚に反省しなければなりません。それでも、皆様に助けられ支えられながらの330年。大変、有難いもったいない事でございます。感謝でいっぱいです。
 平成の時代に入ってからは、原点に立ち返り反省の上に、本来の酒造りに社運をかけて取り組んでおります。
 酒造りにとって何より大切なことは、微生物に良い働きをしてもらう事だと解ってきました。それには「エサ」と「場」が重要な鍵になります。
 「エサ」であるお米は自然米に限ります。以来、近くの農家さん、一人ひとりと手を組み、丹精込めた無農薬米(一部減農薬米)で全量を賄っております。仕込水は、蔵から湧き出る地下水を使用。発酵型微生物は、生きたお米に生きた水が、大好きです。
 そして、想像以上に影響が大きいのは、住み処である「場」です。快か不快かによって微生物が本来持っている働き具合が決まってくるのです。「場」によってそれぞれが持っている特性や持ち味を素直に出しているだけで、善玉菌も悪玉菌もなく発酵していきます。造り手の想いも「場」づくりに大きな影響を与えます。自然に沿い、自然と響き合う方が、発酵へひとりでに傾いていくようです。造り手の生き方考え方が、発酵か腐敗かを決定しているといっても良いかもしれません。
 自然さを忘れた現代人は「人は自然の中の生きものである以上、自然の枠の中でしか生きられない」という事を忘れてしまったような気がします。自然の中の発酵食は、日本人にとって長い歴史をかけて育んできた食の基本です。菌を食べながら、菌と一緒に暮してきたのです。「発酵していると腐らない」という智恵を伝えてきたのです。それがいつしか世界の長寿国と言われるようになったのでしょう。微生物が生み出した代謝物、分泌物の中に人間にとって生命力を湧き起し、自然の治癒力を向上させる物質があることが立証されています。本来の日本酒にはガンや動脈硬化、血栓を予防するなど、さまざまな病気を防ぐ効果があることが解ってきました。さらにストレスを解消する効果があります。ストレスは体内の活性酸素を増加させ老化や多くの病気を誘発させますが、その活性酸素の生成まで防止してくれるのです。WH0(世界保健機関)の調査でも日本酒の薬効がいろいろ報告されています。
本来のお酒「百薬の長」に命がけで取り組んでいく決意です。今、うちの蔵では蔵人、一人ひとりがそれぞれの場で、酒造り唄を唄いながら、楽しみながら、祈りながら、昔ながらの手造りに取り組んでいます。
 厳寒の日、朝早く陽が昇る前から、酒造りが始まります。時には寝ずに夜中の仕事が待っています。微生物の都合に合わせてお酒が醸し出されていくからです。でも決してつらくはありません。みんなで心を込めて楽しみながら酒造りに励んでいます。
 私達が選択した自然に還る道はそう簡単に受け入れられるとも思えません。お酒のコストは原料米が7割を占める中、契約栽培の無農薬米は一般米の3倍の価格になります。そして手間をおしまず、江戸時代の山卸し(やまおろし)酒母(しゅぼ)のもと立て、機械を取りはずし、直接手で感触を確かめながらのてのひら仕込み。原価は通常の何倍もかかります。それでも営業マンをなくし、宣伝費を掛けないで、帳尻を合わせています。そうしてまでも私たちは飲んでくれた人が喜ぶ顔を見るのが最高の喜びなんです。
 一本の自然酒が皆様の元気で長寿のお役に立ち、少しでも御恩返しが出来れば嬉しい限りです。
 試してみて、美味しかったら、それは自然からの恵みです。 
                    ありがとうございます。

          自然に学ぶ酒造り
   
          蔵元寺田本家   当主 寺田啓佐


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